奇曲鑑賞記⑤　＜無音落語＞：九尾さんのブログ：Muse クラシック音楽のコミュニティ

九尾さん

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奇曲鑑賞記⑤　＜無音落語＞

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え～、「盗人にも三分の理」なんてえ言葉がありますように、理屈というのはどんな事にでも通そうと思えば通るものでして・・・　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

「こんちわ！・・・あれ、そんな難しい顔して何してんです？」

「なんだい、八つぁんかい。見りゃあわかるだろう、音楽鑑賞だよ。」

「音楽鑑賞ったって、肝心の音楽がないじゃないですかい。あっしはてっきり奥方と喧嘩でもしたのかと。」

「馬鹿言っちゃいけない。そんなおっかない真似が出来ますか。」

「・・・情けねえ御言葉ですぜ。」

「今聴いているのはだね、かの大作曲家、ジョン・ケージ先生の＜４分３３秒＞って曲だよ。」

「？？？４分３３分署のジョン刑事でやんすか？」

「意味のわからないネタを挟むんじゃないよ。・・・この曲はだね、つまり、演奏しない音楽ってヤツだ。」

「意味のわからねえ事を言ってるのはそっちじゃないですか。音が無いんじゃ音楽とは呼べませんぜ。」

「そこが素人の浅はかさ、別に音が無い訳じゃあないんだよ。胸に手を当ててよ～く考えてみなさい、全く音が聞こえないなんてぇ事がありますか？」

「何だか悪事でも働いて責められてるみたいですねぇ。・・・う～ん、言われてみりゃあ、確かに音は常に聞こえているもんですね。」

「そうなんだよ。そこでケージ先生考えた。演奏者が何も音を出さなくても、そこに流れている音だって、音楽ではないのか？と。」

「・・・・・＜はだかの王様＞って話を知ってますかい？ペテン師に、何もないのに服があると信じ込まされ…」

「何が言いたい？・・・まぁいい。この音楽は無音の不可能性って深い話にもつながるんだが、お前さんには言ったところで分からんだろうからやめとくよ。」

「馬鹿にしちゃあいけねぇ。あっしにだってそれくらいは理解出来ますよ。音の無い世界なんてねえんだ。・・・つまり、今聞こえている音、それらも全てが音楽だって、こういう理屈なんでしょう？」

「まぁ、簡単に言えばそういうことだ。耳を澄ませば聞こえてくる、森のざわめき・・・小川のせせらぎ・・・鳥たちのさえずり・・・」

「サイレンの音も聞こえてきますねぇ。ケージ事件でしょうか？」

「くだらないダジャレ言ってると張り倒すよ。ちゃんと耳を澄ませてしっかり鑑賞しなさい。」

「どっかのおばさんのがなり声が聞こえてきますぜ。あれも音楽の一部で？」

「まぁ、そうなるんだろうね。・・・しかしあの大声、近所迷惑だねえ。」

「でも、どっかで聞き覚えのある声ですぜ・・・。もしかして、奥方さんが帰ってきたんじゃあないですかい？」

「どうもそのようだね。しかし、一体何をあんなに騒いでいるんだか・・・！！！しまった！４時までには洗濯物を取り込んでおけって言われてたのを忘れてた！おい、今何時だい？」

「４時３３分でやんす。」

「ひぃ～っ、またどやされる～・・・・・」

「・・・あぁあぁ、奥さんすごい剣幕だねぇ。こりゃ平手打ちでもされるか？・・・いや、さすがにそこまではしないか。・・・これがホントの打たない（歌無い）音楽。」

おあとがよろしいようで。

※オマケ

前衛イメージの強いケージさんですが、こんな綺麗な曲もあります。

ある風景の中で・・・http://www.youtube.com/watch?v=B_3tFLUMAcs&feature...

夢・・・http://www.youtube.com/watch?v=0Fhc3Tbnhsc

　交響曲　作曲家　器楽曲　吹奏楽∩管弦楽器　協奏曲

日付：2011年05月17日

16件のコメント

このブログ（日記）へのコメント

4分33秒じゃないですけど、似たような音楽？のCDを持ってた事ありますよ。
誰の作品だか覚えてないですが、ピアノのボディを叩いたりこすったりする音が延々と収録されていました。
ピアノは打楽器でもあるからなんでしょうけど。
残念ながら私には理解できず、さっさと捨てましたけど。

ご紹介の曲は綺麗ですけど、なんか寂しいですね…
人が居た気配だけあるけど、誰もいない、みたいな。
実態よりも気配で表現力しようとした人だったのでしょうか。

それにしても、落語っぽくお上手に仕上げてありますね。
CMとか短めの情報番組の作家に向いていらっしゃるのでは…なんて思いました。

2011年05月18日 00時51分09秒

九尾

えまーるさん

「ピアノのボディを叩いたりこすったりする音が延々と」・・・多分私にも理解出来ないでしょうね。

４分３３秒は、「聴く」という行為について考えさせてくれます。
誰も聴いてくれない（音にならない）ものが「音楽」なのか？とか・・・。

前衛作品は、ネタとして捉えれば結構面白いかもしれません。
今回は落語のネタにしてみました。お粗末！

2011年05月18日 19時09分01秒

九尾

動画ひとつ追加しました。好きな曲なので。

う～ん、ピアノのボディを叩いたりこすったりするというのが気になります。

プリペアド・ピアノはあくまで弾く訳だから違うし、本来の使い方じゃないですね。

甘い物が食べたくてチョコレートを買ったのに、ブラックで苦いじゃないか！チョコは甘い物だろ！・・・みたいな。（←子供か！）

2011年05月21日 10時34分35秒

TKN

ジョン・ケージと言えば、昔僕がコントラバスアンサンブル（ウィーンフィルのCb奏者が6人）を聴きにいった時の曲目「竜安寺」が印象に残ってます。
環境音みたいな曲です。

今までジョン・ケージみたいな現代音楽は「一般人には聴くに堪えない」と思い込んでいましたが、実際聴いてみると続きが気になって引き込まれてしまいました。
これもまた「聴く」ということなのでしょうか。

2011年05月25日 21時18分32秒

Shigeru Kan-no

来年が生誕100年でしょう。ピアノのCDなんかどの作曲家よりも多く出ていますね。世界的に売れるようです。

2011年05月26日 06時56分32秒

九尾

TKNさん

そうですね。
自分も昔、現代音楽アレルギーの時期がありましたが、聴き方を変えてみたら良さが分かってきました。（と言っても、えまーるさんの仰ってるような前衛的過ぎるのは、未だに「？」ですけど）

真摯に耳を傾ける事って大事ですね。

2011年05月26日 18時23分20秒

九尾

Shigeru Kan-noさん

ケージも生きていればもう１００歳ですか。

2011年05月26日 18時25分24秒

Shigeru Kan-no

彼は最後まで頭がおかしい様な人でしたね。最後のダルムシュトットも自分の音楽を聴いて楽しんでいるのは彼だけだった。みんな退屈なので早く終わって欲しかった。

2011年05月27日 16時22分10秒

九尾

退屈だと眠くなってしまいますね。

音楽だと、心地良くて眠くなる場合もありますが、落語で眠くなると・・・。

以前、立川○志師匠の落語中に居眠りしたため、会場から連れ出されたお客が激怒して、裁判沙汰になった事がありました。

裁判では、裁判長様が居眠りをネタに冗談を言って傍聴席が大うけしたり、その事が新聞で取り上げられて裁判長のユーモアセンスが絶賛されていたりと、いろいろと珍妙でした。（個人的にはそんなに面白い冗談だとは思わないのですが…）
えぇ、地元で起こった出来事だったのでよく覚えているんです。

演奏会で居眠り御法度という場合って、あるのかな？

2011年05月28日 11時43分48秒

Shigeru Kan-no

何でケージの音楽が退屈なのかは何やっているかわからないからです。人は偶然に出てくる音をそのまま率直に受け入れて楽しもうとしないからです。結局音楽は何で始まっても良いし、次の音は何が来ても良いし、最後の音は何で終わっても良いのです。それより楽しくてすばらしい芸術がありますか？もちろんあるはずがない。なぜなら自然がそうできているからです。

2011年05月28日 17時00分00秒

九尾

では何故「作曲」するのでしょう？

2011年05月28日 20時24分43秒

Shigeru Kan-no

作曲と言うよりもサイコロを振る仕事をしているだけです。譜面に書くと言うことは音を換えられないように固定するためです。アイデイアは完全に彼のものです。この出てくる音を批判せず全部抵抗無しで受け入れさえすれば彼の曲は完全に楽しめます。

2011年05月28日 22時32分38秒

九尾

＜自分の音楽を聴いて楽しんでいるのは彼だけだった＞
　　↓↓↓
＜出てくる音を批判せず全部抵抗無しで受け入れさえすれば彼の曲は完全に楽しめます＞

ということはつまり、抵抗無しで受け入れる聴き方が出来ていたのは御本人だけだった、という事ですか。

2011年05月30日 21時42分43秒

Shigeru Kan-no

そうですね、彼の考え方とやり方は禅の教えそのものです。禅をちゃんと理解していれば彼の音楽は絶対に楽しめるはずです。