Karl von Zinzendorfの神童オペラ評：XP太郎（XP太郎）さんのブログ：Muse クラシック音楽のコミュニティ

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Karl von Zinzendorfの神童オペラ評

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海老澤氏の『モーツァルトの生涯』の中で、Karl von Zinzendorfの日誌に記載されたオペラ寸評が幾つか紹介されている。
　『フィガロ』については、「晩の七時に、オペラ『フィガロの結婚』に行く。台本はダ・ポンテ、音楽はモーツハルト。・・・オペラは退屈であった・・・」と。
　『ドン・ジョバンニ』については、初演の際は、「オペラに行く。『ドン・ジョバンニ』。モーツァルトの音楽は気持ちよく、とても多様である。」再度の観劇では、「晩はオペラの『ドン・ジョバンニ』で大いに退屈した。」と。（ちなみに、ヨーゼフⅡ世は、「音楽は凝っているが、歌には合わない」と評したとも。）
　『コジ』については、「七時前に新作オペラにゆく。『コシ・ファン・トゥッテあるいは恋人たちの学校』。音楽は魅力的で、題材はかなり興味深いものだ」と。
　『皇帝ティートの慈悲』については、「五時に旧市の劇場に行く。皇帝一行は七時半を過ぎてやっと到着。饗応にあずかったのは『皇帝ティートの慈悲』というまことに退屈きわまる芝居だった。」と
　最後に、『魔笛』については、「六時半、ヴィーン郊外ののシュタールヘンベルク劇場のアウエルスペルク夫妻のロージュで、『魔笛』の24回目の上演を聴く。曲と舞台装置は綺麗だが、あとは信じられない茶番である。聴衆はなはだ多し。」と。

　そもそも、ツィンツェンドルフ伯爵とはどのような人物か？神童に関わる時代の彼について、Wikipediaでは、以下の紹介文がある。
Nach Abschluss weiterer Kommerzialreisen trat er 1770 als Hofrat bei der Hofrechenkammer ein. 1773 übernahm Zinzendorf die Ordenskommenden Möttling und Tschernembl. Im Auftrag des Hofkommerzienrates bereiste er Galizien, Polen, Russland, Schweden, Dänemark und deutsche Länder. Nach der Aufhebung des Hofkommerzienrates erfolgte 1776 seine Vereidigung als Gouverneur von Triest. Am 7. Februar 1782 ernannte ihn Joseph II. zum Präsidenten der Neuen Hofrechenkammer und am 26. April 1784 zum Vorsitzenden der Kommission für die TRobotaufhebung.

（宮廷の）通商交渉の国外任務を終えて、彼は1770年宮中財務局の顧問官となった。1773年にはMöttlingとTschernembl騎士団員になる。また、宮中財務官として国内外の各地を訪れた。1776年にはトリエステ総督に任ぜられる。1782年2月7日、ヨーゼフⅡ世は彼を宮廷財務局長官に指名、1784年4月26日には、Robotaufhebung（所謂、「ヨーゼフ主義政策」のひとつで、命じられたことしかできない”小役人根性からの脱却”理念のことか？）委員会の議長に任じた。

　思うに、ツィンツェンドルフ伯爵はヨーゼフⅡ世によって抜擢された啓蒙思想に染まった「行動的」人物だったのではなかろうか？彼の人柄がどのようであったかは、海老澤氏の著作からは知りようもない。

　いつの時代でも、洋の東西を問わず「小役人」のやることは同じである。『コジ』が公演されたとき、「ウィーンの良俗に反する」という評価を受けたことがよく引き合いに出される。しかし、伯爵はこれを「なかなかの題材」と関心を示すところが面白い。また、神童の音楽を良しとするところも。
　こうした人間を登用したヨーゼフⅡ世の元で神童がオペラを作曲できたことついては、もう少し掘り下げてもらいたいものである。　

　作曲家　チェロ

日付：2010年03月13日

9件のコメント

このブログ（日記）へのコメント

Shigeru Kan-no

「フィガロ」や「コジ」はベートーヴェンでも娼婦の音楽と酷評していましたね。当時は彼らにとっては単なるスケベ・オペラだったようです。ベートーヴェンですらわからなかったですから役人がわからないのは当たりませんですね。確かに台本はくだらないアホだらけです。ところがスコア見たりピアノ譜演奏してみるとこりゃ凄い傑作なのですね。あのくだらない話にこんなに凄い音楽をつけたのは前代未聞なのでしょう。全くとんでも無い作品です。フランツ・ヨーゼフⅡ世の寛容さは当時でも凄かったのでしょう。こういう政治家が欲しいものです。

現在もブーレーズはメシアンのトゥランガリーラ交響曲を娼婦の音楽として全く指揮していませんね。彼の最大の代表作なのですが！

2010年03月13日 18時03分21秒

XP太郎

海老澤氏の著作を読んで感じることは、「芸術は人なり」という「品格」を重視した姿勢です。まことに「古めかしい」お考えなので、ツィンツェンドルフ伯爵ではないですが、多少「退屈」致しました。
　当時のウィーンの宮廷オペラがどのようなものであったか。また、音楽的にみてどのようなものであったかという高尚なお話はさておき、『ドン・ジョバンニ』や『コジ』のストーリーは、当時の評価は別として、現代にも通じる中身を持っていると感じています。
　ただ、両者の違いを音楽的感想から云いますと、『ドン・ジョバンニ』は「若さ」と「粗暴さ」とが同居した「不敵な」音楽、『コジ』は「老獪」と「皮肉」が混じった大人の雰囲気の音楽のような気がします。
　ツィンツェンドルフ伯爵はすでに４０代の半ばに達していますから、若かりし頃の自分の生き方と重ね合わせて「思いを致すところ」があったのではないでしょうか。

2010年03月14日 11時51分37秒

Shigeru Kan-no

現代はあの程度のスケベ度だと誰も興味は持たないですね。しかし当時は非常にショックだったのでしょう。皇帝の度量の大きさにもただひたすら感心しますね。

2010年03月14日 16時59分31秒

Ａｚ猫ロメ

『魔笛』に関する伯爵の感想は、常識的には「さもあらん」というところかな。
　映画『アマデウス』の出だし辺りの「ドタバタ」オペラの場面を思い出すが、あれは誇張のし過ぎだろう。しかし、当時のウィーンの市民にとっては新しいエンターテインの出し物だったに違いない。
　神童も、今日に生まれていれば、古くはプレスリー、新しいところではM.ジャクソンなどの超一流のエンターテナーの音楽を担当し、世界的音楽プロデューサーとして活躍できたことだろうに・・・。

2010年03月15日 09時01分29秒

Shigeru Kan-no

たしかに台本はくだらないですが、当時としては斬新ですよね。

この後ヴェルディ、ワーグナー、ヴェズリモ・オペラ、サロメ、ヴォツェック、兵士たち、ノーノとどんどん台本の素材の開拓が始まります。最後には筋が無くなります。みんなその都度問題になって上演禁止になったりしています。

2010年03月15日 17時53分21秒

Ａｚ猫ロメ

「当時としては斬新」ということは、台本というよりは、ヨーゼフⅡ世によって許可されたウィーン郊外のシカネーダ一座の"常設"市民劇場オペラのレベルの高さではないでしょうか。

　豪華な宮廷オペラに慣れ親しんでいたツィンツェンドルフ伯爵が『魔笛』の音楽と舞台印象を良しとしたことは、シカネーダが作ったフライハウス劇場でのオペラ公演が、所謂「どさ回り」の旅芸人一座の民衆オペラとは一線を画すものであったことが予想されます。
　シカネーダーは若い頃からドイツ各地を「どさ回り」する旅芸人一座の人気座長として、ドイツ民衆の趣向を知り尽くしていたはずです。そこに念願の常設劇場を手にして、一発ヒットの出し物『魔笛』を考え、確かな腕を持つ神童にオペラの作曲を依頼したわけです。
　いわば、全てを知り尽くした「やり手」マネージャーによる野心作が『魔笛』だったのではないでしょうか。結果は、見事に彼の計算どおりになりました。
　しかし、これが神童モーツァルトの目指した理想のオペラかとなると、私には疑問に思えるのです。神童がもっと愛したオペラは『イドメネオ』でした。オペラ・セリアですよ。「どたばた劇」ではないのです。
　次にくる自信作オペラは『フィガロの結婚』でしょう。典雅な音楽に満ちた宮廷オペラです。台本は、ある意味では貴族の「よき趣味」を丸く収めた「機会音楽劇」と言えなくもない。その辺りが、徹底した啓蒙主義者であるツィンツェンドルフ伯爵によって「たいくつ」と言わしめる理由になったかも知れませんね。
　しかし、天才児としてヨーロッパの名だたる宮廷で、その優雅さを味わってきたモーツァルトにしてみれば、「宮廷楽長」としての作品こそが彼の目指すところのものだったのではないでしょうか。『魔笛』は、彼の死後「夥しい名声を得るには役立ったが、その報酬は雀の涙ほどに過ぎなかった。」合掌！

2010年03月16日 09時18分20秒

Shigeru Kan-no

まあ台本自身はモーツァルトが書いたわけではないですが、与えられた台本を素直に受け入れる姿勢、もし選んだとしたら選んだ千里眼が新しかったともいえましょう。それを許可したフランツ＝ヨーゼフII世も立派でした。演奏不可能を歌った歌手や演奏した演奏家も拒否しなかったので良い条件が揃っていたのでしょう。

作曲はいつもそうですよ。全くお金にならないどころが日本ではみんな自腹でやっていますね。質よりも絶対金持ちの勝ちですね。ベートーヴェンの第九も儲からなかったようです。しかしオケや歌手・演出などの「魔笛」の演奏費は皇帝は持ってくれたのでしょう。今はそんなのいませんからね。いやいるんだけどちっとも役に立たないのが日本の皇帝でしょう。イギリスは時々やっているようで寸が！

2010年03月16日 17時46分40秒

XP太郎

『魔笛』の大成功をどのように理解するか。Az君の説は、そうかも知れないとは思うが、多少旨すぎるところも感じられる。日本では、やはり神童の作品であり、それらしく聞けば足りるのではなかろうか？
　作曲家、クラシックの作曲家がまともな報酬を得るところが少ないのは、多分今に始まったことではないでしょう。この事実、モーツァルトの伝記に紹介されるモーツァルト親子の手紙を読むと「天才を持った親」の憤まんというか、息子の無知というか、哀れですね。ヨーゼフⅡが贔屓にしてくれたからこそ、今がある、ご説の通りです。

2010年03月16日 21時03分51秒

Shigeru Kan-no

筋がめちゃくちゃにもかかわらず部分・部分的には凄く理解可能ですね。音楽も実は小学校の音楽の教科書に乗るほど単純です。

音楽家はマネージャーでないですからそういうことに無頓着が多いんです。ほんとに一日中音楽しか考えていないのですね。その典型がモーツァルトだったんでしょう。ベートーヴェンはもうちっとしっかりしていて株券とかたくさん持っていたのですが。

2010年03月17日 18時24分04秒

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