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ハンドストップ奏法による大革新を経て、新たな音楽性と、音楽表現の可能性を得たホルン。
しかしそれはまだ完全な楽器にはほど遠く、多くの音楽家に、『完全に近いホルン』の出現が待たれるのでした。
…以上が前回のあらすじです。そして、これからの話こそ、現代の、いわゆる『フレンチホルン』の完成の軌跡の集大成であり、一番感動を産み出す部分なのです。
数多くの音楽家のその願いに答えるべく、楽器職人はホルンの改良にいそしみました。
試行錯誤を加えていくうちに様々な改良品が産まれ、そして時代の波に消えていきました。
その代表といえるものが…ただ管を丸めたナチュラルホルンでは特定の調しか演奏できないので、古来の人は違った長さの管を用意し、調が変わる度に吹奏する楽器を持ち換えていたのですが、その持ち換えの手間を省くために、あらゆる長さの管をひとまとめにし、吹き口、吹く部分を変えることによりそれぞれ違う長さの管を演奏することができる楽器である『オムトニックホルン』というものでしょう。これは「非常にコンパクトなナチュラルホルン全種類セット」というくらいしか特徴がなく、持ち換えの時間が少し短縮されただけであり、また、とてつもない重さのため、すぐに廃れてしまったのです。
しかし、この次に考えられた『ピストン・ウ゛ァルブによる管の切り替え装置付きホルン』に、非常な利便性と演奏能力を兼ね備えることの可能性を人々は感じ、当時の最新鋭の金属加工技術を持ってして、あらゆる職人が互いの力を合わせ、『管の長さがバルブの操作一つで自由自在に変わるホルン』を作り上げようとしたのです。
この技術が、後々長い年月をかけ、現在のホルンにその姿を変えるのです。
話は変わるかのように思われましょうが…当時、ホルンの音楽性に心酔し、楽曲の重要な部分をも多く担当させた作曲家は数多く知れませんが、もっともホルンを愛した音楽家として、かの『ベートーベン』が挙げられます。
彼はホルンの知識と扱いに長けており、数有るシンフォニーにおけるホルンのフレーズ、複数人の役割分担による楽曲はどれも超一級品であり、今現在でも広く浸透しているものです。
彼はある日、書きかけのシンフォニーの筆をおき、ある知人の噂話に耳を傾けました。
『最近町にふらりとやってきた若いホルン奏者が、音階を完璧に吹ける楽器を持っているそうだよ』
友人にとっては他愛もない噂話だったのかも知れませんが、これを聞いたベートーベンは立ち上がり、『すぐにその若者に会いに行こう!今すぐにだ!』と言ったと言います。
実はその若者、先のバルブ付きホルンの試作品を、あるチェコの楽器職人から譲り受け、ドイツで遊学をしていたのですが、その噂がベートーベンを引き寄せたのです。
その若者(と新たな楽器)を目にしたベートーベンはそれこそ驚喜乱舞し、『こんな素晴らしい巡り合わせがあるとは!是非私が今手掛けているシンフォニーの初演に立ち会ってくれ!あぁ!そうだ!この楽器を世に知らしめなければ!』と、会って間もない若者を、自分の楽団のホルンセクションに招いたのです。
そして、彼のシンフォニーのある楽章に、彼はなんとソロを四番ホルンにその席を置いた若者に(ソロは大抵一番ホルン奏者が担当すべきもの)任せる部分を作ったのです。
ただの音階を奏するだけに近いソロ。しかし今までのホルンには決して演奏は平易とはいえないソロを完璧にこなした若者(というより楽器)に世の音楽家は、まさに奇跡!と絶賛をしたのです。
このシンフォニーこそ、ベートーベンの手掛けた最後の交響曲、『交響曲第九番「合唱」』であり、その第三楽章にそのソロは存在します。
自分はこれらのホルンの歴史を勉強して、このソロに出会ったとき…衝撃にも似た感動を覚えました。自分の演奏している楽器の、言葉に言い表すことのできない深い歴史と、ホルンに対する、人々の思慮の深さに触れ、感涙にむせぶいたのです。
残念ながらベートーベンはこれ以降シンフォニーを完成させることはなかったのですが、その深い音楽性と感動的な出会いは、終生、自分の心の糧となるでしょう。
次回からは、完成されたホルンの、現代にいたるまでの経緯をお話ししたいと思います。
追記…以上の、『交響曲第九番第三楽章』における四番ホルンのソロ、ついての謎については、様々な説があります。低音奏者である四番ホルンのほうが、一番奏者よりハンドストップ奏法に長けていたので、比較的困難である音階のソロを四番奏者に任せるようにした、という説が、自分の『チェコの若いホルン奏者説』と二分して有名であるようです。
真意はまだわかりませんが、自分はこの若いホルン奏者の存在を信じたい…と、思っています。
ホルン 指揮者 交響曲 器楽曲 吹奏楽∩管弦楽器